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海と牧童(1)

海と牧童(1) 春先の風は時に強く剃刀の薄刃のように少年の頬を撫でつけていく。産毛が陽光にきらめく柔らかい皮膚は、その度ごとに鋭く傷つけられているかのようだ。 少年の、透き通るように白い、両手の細かい指が、横笛をそのなめらかな唇に寄せている。 流れる曲は悲しい憧れにも似た、細やかなさざなみのようである。(なんてきれいな少年でしょう)最初、牧場にやって来た彼を見て、羊たちは皆、目を細めたものだった。...

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「夢の中の永遠」(4)

「夢の中の永遠」(4) 「それより、あなたもBBSを開局しませんか。いま、パソコン通信をやっている環境にホストシステムのソフトさえあれば、単回線ネットならすぐにでも開局できるんですよ。幸い、わたしのところのシステムも、フリーソフトのものですから、そのまま使える形にしてあなたに転送してあげますよ」  深刻な話の間にも笑みを絶やすことのなかったシスオペは、今度は熱心にホスト運営を勧めた。そういえば、フ...

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「夢の中の永遠」(3)

「夢の中の永遠」(3) れもんは消えてしまった。れもんは最初からいなかったのだ。れあもんという、悪魔を名乗る男に、僕はだまされていた。しかし、本当のところあいつは何者なのだ。ふと我に帰ると僕はあわててまた「牧羊ネット」にアクセスした。 れあもんはログオフしたらしい。チャットルームを覗いたら今度はシスオペさんが待機していた。とりあえず、僕はあいさつした。 「こんばんわ。お世話様です」 「あっ、帰って...

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「夢の中の永遠」(2)

「夢の中の永遠」(2)  オフミーティングの会場は駅前の喫茶店だった。一階が銀行であるビルの地下に降りていくと明るい店内がカウンター越しに見渡せる小ぢんまりした店である。 客席には一人だけ、大柄で腹の出た男が座っていた。ボードの内容を思い出し、これが牧羊ネットのシスオペと判断できた。 おれは、はにかみつつも笑顔で迎えてくれる相手に、ありきたりではあったがこれまでの礼を述べた。そして、ふと胸中に沸い...

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「夢の中の永遠」(1)

 「夢の中の永遠」(1) 犬の鳴き声が聞こえる…… それは笹の葉に置かれた水玉であった。 霧状の雨滴が冷たい笹の上に露を結んで周囲の景色を映し出し、ひとつの小さな世界を形づくっている。冷気を収めながら、次第に自らの透明な重さに耐えきれず、笹の上をゆっくりと滑るように落ちていく。 やがてひと思いに笹の先端を離れると、それぞれ光と闇に分け放ちながら地上めがけて落下する微細な無数の宇宙となる。それは地表に...

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